大森歯科大学

大阪市中央区本町 大森歯科医院
     院長のブログ
 〜明日の夢ある歯科を語る〜
Column 2007年2月号
皆さんこんにちは!大森です。

冬が通り過ぎてしまって春が来たような陽気の今日この頃ですが、
皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、「虫歯は生活習慣病!! 最新の虫歯予防を知る』シリーズの4回目、
今回のお題は「キシリトールの実際と効果的な使い方」です。

巷ではキシリトールの話題が取り上げられ、また、虫歯を作らない・再石灰化を
促進するという謳い文句で様々な製品(食品)が売られていますが、
皆さんはどんな風に使っていますか?

ところでキシリトールって一体何なのでしょうか?
フッ素とは違うものなのでしょうか?
そして商品に書かれた宣伝はどこまで真実なのでしょうか?

今回は、そのような疑問を解決し、効果的に使っていただくために
キシリトール特集でいきたいと思います。


<初めに・・・キシリトールとは>

キシリトールは甘味料の一種で、糖アルコール(ブドウ糖・麦芽糖などに水素を
加えて還元したもの)という分類になります。
糖アルコールは他にソルビトール・マルチトース・エリスリトール・マンニトール
などがありますが、そのなかでもキシリトールが最も甘さが強く、
砂糖と同じくらいだそうです。
キシリトールは過去には白樺や樫の樹液に含まれる物質を使用して製造されて
いましたが、今ではそのほとんどが、とうもろこしの芯から工業的に作られています。

ですから、キシリトール=天然の甘味料というイメージが強いのですが、
実際には人工甘味料なのです。
安全性においては世界的にも認められており安心して使用できます。


<キシリトールはなぜ虫歯の原因にならないの?>

一般的に砂糖と呼ばれるショ糖をはじめ、果糖・乳糖・麦芽糖などの糖類を、
虫歯菌は取り込み、かわりに歯を溶かしてしまう酸を産生します。
しかし、糖アルコールは、虫歯菌が取り込んでも、酸を出さないのです。
そのため歯は溶けないのです。
つまり、キシリトールを代表とする糖アルコールは虫歯を作らない甘味料で
あるということです。

キシリトール=“甘いけど虫歯にならないもの”


<キシリトールで虫歯は治る?>  

キシリトールは再石灰化を促進させるとも言われていますが、本当なのでしょうか?
虫歯菌の出す酸によって、歯の表面のハイドロキシアパタイトの結晶から
カルシウムなどが溶け出し結晶構造が崩れる現象を脱灰といいます。
(=虫歯のはじまり)

一度脱灰がおきても初期段階であれば、新鮮な唾液に触れることによって、
唾液中のリン酸やカルシウムがそこに再び沈着して結晶の
ミネラル成分が回復します(=虫歯部分の修復)
この現象を再石灰化といいます。

ではキシリトールはどうかというと、脱灰したところの再石灰化を促進させるという
報告もありますが、実はこの作用はあまりにも小さいのです。
砂糖によって虫歯ができる力を100とすると、キシリトールが再石灰化する力は
0.1位なのだそうです。
つまり残念ながら再石灰化力は無いに等しいということなのです。

キシリトールを歯に塗りつけても効果なし!


<キシリトールの上手な使い方>

先ほど説明したとおり、キシリトールの成分には虫歯予防の力はほとんどないのです。
例えば、歯磨き粉にキシリトールが含まれていても、その効果はほとんど無いのです。

ではどのような使い方が良いのでしょうか?
結論から申し上げると「キシリトール100%のガムを食後すぐに噛む」ことです。

これについてもう少し詳しく説明していきましょう。
ここでまず思い出していただきたいこと、それは

「虫歯菌は、食物が口の中に入ってきた瞬間から酸を出し、歯を溶かし始める」
「新鮮な唾液は虫歯菌が出した酸を中和し、さらに再石灰化を促進させるという
2大効果がある」

ということです。

つまり、唾液がたくさん出れば、虫歯予防になるのです。
では食事のあとすぐに新鮮な唾液をたくさん出すために私たちは
どうしたらよいのでしょうか?
それは「噛むこと」「甘味」という刺激を脳にあたえればよいのです。
噛むという行為や甘いと感じることは、脳に伝達され、
唾液の分泌を促進させるのです。
ただし甘味は虫歯の原因になるものではいけません。
キシリトール100%のガムはそれを全て満たしているのです!
キシリトールガムを食後すぐに噛むと、“噛む刺激”と“甘い刺激”で
活発に唾液が分泌されます。
その唾液は、虫歯菌から酸がたくさん放出され歯が溶け始めている環境を、
素早く中和し再石灰化を促進させるのです。

キシリトールガムの正しい使い方=食べたら噛む


<虫歯になりにくい食べ物を選択する上での注意点>

ガムで虫歯予防のしくみは、お解かりいただけたと思います。
それでは、ガム以外のものも虫歯になりにくい食べ物を選びたいという方に、
注意すべき点を挙げておきます。
あなた自身が鋭い視点をもって食べるものを選ぶことができれば、
キシリトールはいままでの何倍も役に立つことでしょう。


その1 「キシリトール入り」「砂糖不使用」の文句に注意!!

甘味料はキシリトールと砂糖以外にもたくさんあります。
その中には当然虫歯の原因になるもの(例えば水飴・麦芽糖・果糖)もあります。
キシリトールが入っていても砂糖などが入っているもの、砂糖が入っていなくても
麦芽糖などがはいっているものはたくさんあるのです。
キシリトールか他の糖アルコール(マルチトース・ソルビトールなど)
100%であることを確認しましょう。
キシリトール100%を選ぶ! これが重要です


その2 甘味料以外でも、虫歯を作る成分が入っていないかを調べる
甘味料以外で虫歯を作るものに粉乳・乳化剤・香料などがあります。
つい最近「歯医者さんが考案した虫歯になりにくい、キシリトール100%の
チョコレート」というのが発売されていました。
しかし粉乳が含まれていることなどから、このチョコレートは甘味料が
キシリトール100%であっても、虫歯の原因にはなります。
やっぱりそんなに甘くはないのです!


その3 まぎらわしい表記にだまされないように

「虫歯になりにくい」・「歯に優しい」・「歯に安心」・「虫歯予防に」
などのまぎらわしいキャッチフレーズが記載された食品が数多くありますが、
必ずしも科学的根拠に基づいているものばかりではないので、
その表現に惑わされないでください。


その4 日本トゥースフレンドリー協会の「歯に信頼」マークを見つける

日本トゥースフレンドリー協会という団体があります。
そこで虫歯にならないことをしっかり確かめられたものだけに、
「歯に信頼」マークというものがつけられています。 

「歯に信頼」マーク
 
このマークのついたお菓子は協会の厳しい基準をクリアしたものなので、
虫歯の原因にはならないそうです。
皆さんこのマーク知っていましたか?
ぜひお店で探してみてください。


皆さん、今回はひとつの話題だけを取り上げて
お話してみましたがいかがでしたか?

というのもキシリトールについては特にいろいろな情報が
溢れかえっているのに、あまりに正しいことが皆さんに伝わっていないと
いうことを痛感していたのでこのような企画をしてみようと思ったのです。

どこかできいたような、納豆=ダイエットみたいなものにキシリトールが
なってしまってはいけないし、皆さんが惑わされてもいけないのです。


いよいよ春到来!
暖かくなってくると体も少し軽くなって活動的になってきます。
来月も全力で診療しコラムも書きますのでどうぞよろしくお願いします。
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