大森歯科大学

大阪市中央区本町 大森歯科医院
     院長のブログ
 〜明日の夢ある歯科を語る〜
Column 2006年11月号
今年はとても木々が美しく色づきました。
雨が降ったので多くが散ってしまいましたが、色づいた落ち葉で
地面が覆われているのもまた美しく、この季節のよさを感じさせてくれます。


さて、今月から始まる、「虫歯は生活習慣病!! 最新の虫歯予防を知る」 シリーズ。
今回は、「虫歯の出来るしくみ」 です。
さっそく始めましょう。

口の中の代表的な疾患として挙げられるのが虫歯と歯周病です。
このような病気の原因は何なのでしょうか?
チョコレート? それともキャラメル・・・・・?
いえいえ、原因は 『 細菌 』 なのです。

ヒトの体にはいろんな菌が住んでおり、その多くは通常悪さを
することなくヒトと共存しています。
これらの菌を常在菌といいます。
口の中も例外でなく常在菌がいて、このなかに虫歯菌や
歯周病菌が含まれているのです。
いつもはおとなしくしている常在菌も何かのきっかけで、
急に数が増えたり力が強くなったりしたときに初めて
ヒトの体は負けてしまい病気になってしまうのです。

口の中の常在菌はおよそ700種類あり、その中の3分の2が
糖をエサとして取り入れて酸を放出すといわれています。

これらを総称して虫歯菌といいます。
虫歯菌は単体では弱いので、集合体となって歯の表面にくっついています。
(=歯垢・プラーク)
さらに集合体の表面を特殊な膜で覆い外敵から防御しています。
(=バイオフイルム)

虫歯菌

われわれが何かを口にしたとき、その中に糖分や、分解されて糖に変化するものが
含まれていると、このバイオフィルムの中の虫歯菌たちは糖を取り込んで
一斉に酸を放出します。この酸が歯を溶かして虫歯ができてしまうのです。

下のグラフを見てみましょう。

歯の表面が酸性になっている表

これはわれわれが何かを食べた(飲んだ)時に虫歯菌が出した酸によって、
歯の表面が酸性になっているのを表します。

食べて(飲んで)すぐ、ほんの2〜3分くらいでどんどん
酸性に傾いてゆきピークをむかえます。
その後新鮮な唾液がでることによって、酸は徐々に中和され
1時間くらいかけてゆっくりと元の中性に近いところに戻っていっています。

この赤矢印のところのpHを臨界pH(pH5.6)といいますが、
この臨界pHを超えて酸性になっている間は、ずっと歯が溶けています。
つまり虫歯が進行している時間なのです。
この時間が長いほど危険なのです!

ところで、先ほど糖を摂ると虫歯菌のエサになるという話をしました。
ではどのような食品に糖は含まれるのでしょうか?

まず皆さんお分かりの通り、砂糖には糖が含まれていますね。
砂糖を使っている食品だけで非常にたくさんの種類があります。

しかし!それだけではないのです!
他にもあまり知られていませんが、虫歯をつくる食品はたくさんあるのです。
それらは唾液(つば)中のアミラーゼという分解酵素によって
糖に分解されるものなのです。

順番に挙げていきましょう。

まずはデンプンです。中学校のころに習いましたよね?
炭水化物ともいいます。
具体的にいうと、ご飯(ライス)・パン・ジャガイモ・サツマイモ・うどん・パスタ・・・
数限りなくあります。

次に、乳製品。
これらはラクトースという糖を含んでいます。

そして、果物。
これらは果糖という糖を含んでいます。

この他にも、香料などの添加物に糖が含まれることもあります。

これらの食品を口にした瞬間に唾液中のアミラーゼが分解し、糖に変えます。
一瞬です。
そして酸酸性菌は酸を放出し、歯を溶かしてゆくのです。
食品の成分ラベルをみてください。ほとんどのものに何かしら入っています。
つまり、私たち普段が口にする食品ほとんどは、
虫歯菌のエサとなっている、ということです。

虫歯ができるしくみは、ご理解いただけたでしょうか?

でも、そうしたら虫歯がない人は食事をとっていないのかしら?
それとも噛まずに大急ぎでまるのみしちゃってるのかしら?
そんなことはありません。
次回はおいしくごはんを食べて、虫歯予防もする、そんなお話をしたいと思っています。


12月は忘年会やクリスマスなどイベント盛りだくさんですね。
大いに楽しんでください。
それではまた来月お会いしましょう。
14:26 | - | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark

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